製造・軽作業の基礎ガイド
派遣先でパワハラ・いじめに遭ったら誰に相談?記録と連絡の順番
派遣先でパワハラやいじめに遭ったと感じたときに、安全確保、記録、派遣元・派遣先の相談窓口、都道府県労働局へ連絡する順番を解説します。

派遣先で怒鳴られる、無視される、仕事を与えられないなどの言動が続いたら、一人で法的な名称を決めてから相談する必要はありません。まず安全を確保し、「いつ、どこで、誰から、何をされたか」を記録して、雇用主である派遣会社と派遣先の相談窓口へ連絡します。
厚生労働省が2026年7月7日に公表した令和7年度の施行状況では、総合労働相談は119万8,010件でした。民事上の個別労働関係紛争に関する相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」は5万5,614件で14年連続最多です。
厚生労働省は、労働施策総合推進法上の「職場のパワーハラスメント」に関する相談は同法に基づいて別に扱われ、この5万5,614件には計上されないと注記しています。したがって、この数字はパワーハラスメント相談全体の件数でも、裁判や行政によってパワーハラスメントと認定された件数でもありません。統計を自分の事案の結論にせず、具体的な言動と就業への影響を整理することが大切です。
危険がある場合は安全確保を優先する
次のような状況では、通常の相談順を待たず、その場を離れることや緊急連絡を優先します。
- 暴力を受けた、または暴力を受けるおそれがある
- 脅迫され、身の危険を感じる
- 強い体調不良、過呼吸、けがなどがある
- 一人きりの場所へ呼び出されている
- 危険な作業を罰として強要されている
派遣先の安全担当、派遣会社の緊急窓口、必要に応じて警察・消防・医療機関へ連絡してください。連絡できる状況であれば、派遣会社へ「安全上、現場を離れた」と事実を伝え、出勤・早退・給与の扱いも後から確認します。
パワーハラスメントの3つの要素
厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、職場のパワーハラスメントを、次の3要素をすべて満たすものと説明しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 労働者の就業環境が害されるもの
客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲の適正な指示や指導は該当しないとされています。一方、本人に仕事上の問題があった場合でも、人格を否定する言動などはパワーハラスメントに当たり得ます。
相談するときは、最初から「法的にパワハラだと証明しなければ」と考えず、言動、頻度、相手との関係、業務上の必要性、心身や仕事への影響を伝えてください。
派遣社員は派遣元と派遣先の両方に相談できる
派遣社員の雇用主は派遣会社ですが、日々の業務指示は派遣先から受けます。厚生労働省は、派遣労働者について、派遣元だけでなく派遣先も、自社で雇用する労働者と同様にパワーハラスメント防止の措置を講じる必要があると説明しています。
| 相談先 | 主に伝えること |
|---|---|
| 派遣会社の担当者 | 就業継続、安全、契約、派遣先との調整 |
| 派遣会社の相談・苦情処理窓口 | 担当者で進まない場合、正式な調査・対応依頼 |
| 派遣先の指揮命令者 | 現場の安全、当日の業務、加害者から離す対応 |
| 派遣先のハラスメント窓口 | 派遣先内の事実確認、再発防止、配置や指揮系統 |
| 都道府県労働局など | 法制度、社外での相談、紛争解決援助 |
行為者が直属の上司である場合、その人へ先に相談する必要はありません。別の管理者、派遣先窓口、派遣会社へ連絡してください。
最初に残す記録
感情を否定する必要はありませんが、相談先が事実を確認しやすいよう、出来事と影響を分けて残します。
- 発生した年月日と時刻
- 場所と周囲にいた人
- 行為者の氏名・部署・立場
- 言われた言葉やされた行為
- 直前の業務指示や経緯
- 同じことが起きた回数・期間
- その後の仕事、睡眠、体調への影響
- 相談した相手、日時、回答
- 希望する対応
〇月〇日14時ごろ、作業場の朝礼スペースで、
△△さんから約10人の前で「〇〇」と3回言われた。
その後、同じ工程から外され、作業指示がない状態が2時間続いた。
目撃者は〇〇さんと△△さん。
自分宛てのメールやメッセージ、勤務表、受診記録なども整理します。会社の機密資料や第三者の個人情報を無断で持ち出すのではなく、自分が受けた言動と勤務への影響を中心に記録してください。
録音の可否や使い方は、プライバシー、会社規則、証拠の扱いなど個別事情が関わります。必要な場合は公的窓口や法律の専門家へ相談しましょう。
連絡する順番
1.派遣会社へ事実と安全上の希望を伝える
派遣先での言動について相談したく連絡しました。
〇月〇日から、△△さんによる〇〇という言動が続いています。
日時と内容を記録しています。
安全に就業を続けられるよう、派遣先への確認と、
当面の指揮命令者・勤務場所について相談したいです。
「調査してほしい」「本人と接触しない配置にしてほしい」「連絡窓口を変えてほしい」「体調のため休みを相談したい」など、現時点の希望も伝えます。すべての希望がそのまま実現するとは限りませんが、必要な安全配慮を検討しやすくなります。
2.派遣先の相談窓口を確認する
派遣先の就業規則、掲示、社内ポータルなどに相談窓口が示されている場合があります。派遣社員も利用できる窓口と連絡方法を、派遣会社または派遣先へ確認してください。
派遣元と派遣先のどちらか一方へ連絡すれば、もう一方へ相談できないわけではありません。共有する情報の範囲、本人名を行為者へ伝える時期、調査中の接触回避なども確認します。
3.回答と次の期限を記録する
相談した後は、次の点を確認します。
- 相談を受け付けた部署と担当者
- 誰が事実確認を行うか
- 誰にどの範囲の情報を伝えるか
- 調査中の勤務場所・指揮命令者
- 次の連絡予定日
- 欠勤・休業・有給休暇など勤怠の扱い
- 調査結果と対応をどの方法で受け取るか
口頭回答を受けた場合は、認識に違いがないかメールなどで確認します。
相談しても進まない場合
担当者から返答がない、担当者自身が問題に関わっている、派遣元と派遣先が対応を押し付け合う場合は、窓口を変えます。
- 派遣会社の支店責任者・苦情処理窓口
- 派遣先の人事・コンプライアンス・ハラスメント窓口
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
- 総合労働相談コーナー
厚生労働省は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、職場のパワーハラスメント等の民事上のトラブルについて、当事者からの申出により解決援助を行うと案内しています。労働局長による援助や調停の制度もあります。
相談内容によって、労働局の担当部署、労働基準監督署、警察、法テラス、弁護士など適切な窓口は異なります。時系列と手元の書類を用意し、どこへ相談すべきか分からない場合は総合労働相談コーナーで確認してください。
相談を理由とする不利益な取り扱い
厚生労働省は、労働施策総合推進法に基づく紛争解決援助の対象として、パワーハラスメント防止措置と、パワーハラスメントの相談を行ったことなどを理由とする不利益な取り扱いを挙げています。
相談後に次のような変化があった場合は、直ちに結論を出さず、相談前後の事実を記録してください。
- 仕事を一方的に外された
- 契約終了や更新なしを告げられた
- 希望していない退職を求められた
- シフト、配置、評価が急に変わった
- 相談内容を職場内へ不必要に広められた
契約更新の時期と重なった場合は、更新判断の時期・理由・書面を確認します。派遣の契約更新・終了ガイドも参考にしてください。
退職・派遣先変更を考える場合
安全や健康のため、今の派遣先を離れることが必要な場合もあります。ただし、派遣先で働くことをやめるのか、派遣会社との労働契約も終了するのかは別です。
- 現在の労働契約期間
- 派遣先だけ変更できるか
- 休業や有給休暇の扱い
- 社会保険や給与の継続
- 契約終了理由と離職票の記載
これらを派遣会社へ確認します。契約途中の退職を検討する場合は派遣契約の途中で辞めたい場合、仕事内容や条件の相違もある場合は派遣先で条件が違ったときの相談手順も確認してください。
派遣先のパワハラ相談でよくある質問
パワハラかどうか自信がなくても相談できますか?
相談できます。法的な名称を自分で確定せず、具体的な言動、頻度、相手との関係、仕事や体調への影響を伝えてください。
派遣先と派遣会社のどちらへ先に相談しますか?
安全上の緊急対応は現場の管理者へ求めつつ、雇用主である派遣会社にも早く連絡します。行為者や関係者によっては、派遣先のハラスメント窓口へ直接相談する方法もあります。
目撃者や録音がないと対応してもらえませんか?
目撃者や資料がなくても、相談自体をあきらめる必要はありません。日時、場所、言動、その後の影響を継続して記録し、相談先へ伝えてください。
相談したことを行為者へ知られたくありません
調査には関係者への確認が必要になる場合があります。誰へ、いつ、どの範囲の情報を伝えるか、相談受付時に確認してください。完全な匿名調査が可能とは限りません。
明日から出勤できないほどつらいです
派遣会社へ体調と安全上の事情を伝え、出勤、休暇、受診、派遣先との連絡方法を相談します。緊急の危険や重い症状がある場合は、警察・消防・医療機関などへ連絡してください。
まとめ
派遣先でパワハラやいじめに遭ったと感じたら、安全を確保し、言動と影響を記録して、派遣会社と派遣先の相談窓口へ連絡します。派遣元だけでなく、派遣先にも派遣労働者に対する防止措置が求められています。
相談統計の「いじめ・嫌がらせ」件数は、法的なパワーハラスメント認定件数ではありません。自分の事案についても名称だけで結論を急がず、具体的な事実をもとに対応を求め、進まない場合は都道府県労働局など社外の窓口を利用しましょう。