製造・軽作業の基礎ガイド
派遣の就業条件明示書・雇用契約書の見方|違いと確認項目
派遣の労働条件通知書、雇用契約書、就業条件明示書の違いを整理し、契約期間、更新上限、業務、勤務時間、賃金、苦情窓口など就業前の確認項目を解説します。

派遣で働く前には、派遣会社との労働条件と、派遣先での就業条件の両方を確認します。名前が似ている書類でも役割は異なり、就業条件明示書だけで賃金や退職などすべての労働条件を明示したことにはなりません。
まず「誰と結ぶ契約か」で分けると理解しやすくなります。労働条件通知書と雇用契約書は、雇用主である派遣会社と自分の関係を確認する書類です。就業条件明示書は、どの派遣先で、誰の指揮命令を受け、どのように働くかを確認する書類です。
3つの書類の違い
| 書類 | 主な役割 | 作成・交付する側 | 主な確認内容 |
|---|---|---|---|
| 労働条件通知書 | 労働契約の条件を明示する | 派遣会社 | 契約期間、賃金、労働時間、休日、退職 |
| 雇用契約書 | 派遣会社と労働者が合意した内容を記録する | 派遣会社と労働者 | 労働条件、署名・同意、特約 |
| 就業条件明示書 | 派遣先での具体的な就業条件を明示する | 派遣会社 | 派遣先、業務、指揮命令者、期間、苦情窓口 |
労働条件通知書と雇用契約書が1つの書類にまとめられ、「労働条件通知書兼雇用契約書」などの名前になっている場合もあります。書類名ではなく、必要な項目が記載されているかを確認してください。
また、「労働者派遣契約」は派遣会社と派遣先企業の間で結ぶ契約です。派遣社員本人と派遣先が結ぶ雇用契約ではありません。
労働条件通知書で確認すること
派遣会社が労働契約を結ぶ際には、賃金、労働時間その他の労働条件を明示する必要があります。特に重要な事項は書面などでの明示が必要です。
- 労働契約の期間
- 有期契約を更新する場合の基準
- 更新上限の有無と内容
- 就業場所と従事する業務
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 始業・終業時刻、休憩、時間外労働の有無
- 休日、休暇
- 基本時給、割増賃金、締日、支払日
- 昇給、賞与、退職金の有無
- 退職と解雇に関する事項
- 社会保険、雇用保険
- 有期雇用労働者の相談窓口
2024年4月から、就業場所と業務については「雇入れ直後」だけでなく、将来変更される可能性がある範囲の明示が追加されました。有期契約では、更新上限がある場合の内容、無期転換申込機会が生じる更新時の案内なども確認対象です。
雇用契約書で特に注意したい項目
雇用契約書は、労働条件通知書と同じ内容を含むことがあります。署名や電子同意をする前に、次の点を確認します。
契約期間と派遣期間は同じとは限らない
派遣会社との雇用契約の期間と、1つの派遣先で働く期間は別の契約に基づきます。日付が一致していることもありますが、必ず同じになるとは限りません。
次の3つの日付を分けて見てください。
- 派遣会社との雇用契約の開始日・終了日
- 派遣先で就業する開始日・終了日
- 契約更新を判断・通知する時期
自動更新ではなく更新基準を見る
「更新する場合がある」と書かれていても、更新が保証されるわけではありません。業務量、勤務成績、能力、会社の経営状況、従事業務の進捗など、どの基準で判断するかを確認します。
契約更新の連絡時期や確認方法は派遣の契約更新ガイドも参考にしてください。
口頭説明との違いを残す
求人票や担当者の説明と契約書が異なる場合は、署名後に修正を求めるより、署名前に質問する方が整理しやすくなります。
求人案内では〇〇と説明を受けましたが、
雇用契約書には△△と記載されています。
どちらが適用される条件か、理由とあわせて書面で確認させてください。
就業条件明示書で確認すること
就業条件明示書には、派遣先で実際に働くための条件が記載されます。厚生労働省の案内では、主に次の事項が挙げられています。
| 項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 業務内容 | 具体的な作業、付随業務、責任の程度 |
| 就業場所 | 事業所名、所在地、部署・組織単位 |
| 指揮命令者 | 現場で業務指示を出す人 |
| 派遣期間 | 就業開始日・終了日 |
| 勤務時間 | 始業・終業、休憩、勤務日 |
| 時間外・休日労働 | 延長できる時間、休日就業の範囲 |
| 安全衛生 | 保護具、教育、健康管理、危険有害業務 |
| 苦情処理 | 派遣元と派遣先それぞれの担当者・方法 |
| 契約解除時の措置 | 次の就業機会、休業手当など雇用安定の措置 |
| 派遣元・派遣先責任者 | 連絡先と役割 |
| 期間制限 | 抵触日や組織単位に関する事項 |
「その他付随業務」という記載がある場合は、どこまで含むのかを質問します。たとえば、データ入力の求人で電話応対、来客対応、倉庫作業まで恒常的に求められるなら、説明された業務範囲と合っているか確認が必要です。
書類を受け取るタイミング
労働条件は、労働契約を結ぶ際に確認できる状態である必要があります。就業条件も、派遣就業を始める前に確認します。
次の状態は避けましょう。
- 初出勤後まで労働条件通知書を受け取れない
- 契約書へ先に同意し、詳細は後日説明すると言われる
- 就業条件明示書が以前の派遣先のまま
- アプリ上の書類へアクセスできず、保存もできない
- 更新後の契約書が届かないまま働き続ける
電子交付の場合は、閲覧できるだけでなく、自分で保存・印刷できる形式かを確認します。契約終了後にマイページへ入れなくなることもあるため、各更新時点のファイルを保存してください。
就業前に3枚を突き合わせる
求人票、雇用条件、就業条件を同じ表にして比べると、違いを見つけやすくなります。
| 確認項目 | 求人票 | 労働条件・雇用契約 | 就業条件 |
|---|---|---|---|
| 契約期間 | 募集時の目安 | 派遣元との雇用期間 | 派遣先での就業期間 |
| 仕事内容 | 募集内容 | 業務・変更範囲 | 派遣先での具体的業務 |
| 勤務地 | 募集地域 | 就業場所・変更範囲 | 事業所・部署 |
| 勤務時間 | 予定シフト | 所定労働時間・休日 | 派遣先での開始終了・休憩 |
| 賃金 | 掲載時給 | 適用される時給・手当 | 原則として賃金額の中心書類ではない |
| 残業 | 月の目安 | 時間外労働の有無 | 延長できる時間・休日就業 |
違いが見つかったら、「どれが最新か」「変更に同意したか」「変更後の書面があるか」を確認します。
働き始めてから条件が違ったとき
- 日付が分かる求人票、契約書、就業条件明示書を保存する
- 実際の指示、勤務時間、作業内容を記録する
- 派遣先だけでなく、雇用主である派遣会社へ連絡する
- 正しい条件と今後の対応を文書で求める
- 危険な作業は安全を優先し、その場で作業方法を確認する
- 解決しない場合は相談窓口へ進む
明示された労働条件が事実と異なる場合、労働基準法上の取扱いが問題になることがあります。ただし、自己判断で無断欠勤や即日退職をする前に、契約書と事実を整理し、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、都道府県労働局の需給調整事業担当などへ相談してください。
よくある質問
雇用契約書がなく、労働条件通知書だけでも有効ですか?
労働契約は書類名だけで成立の有無が決まるものではありません。一方、使用者には重要な労働条件を書面などで明示する義務があります。通知書の内容と、双方が何に合意したかを確認してください。
就業条件明示書に時給が書かれていません
就業条件明示書と労働条件通知書では明示する役割が異なります。時給、締日、支払日は、派遣会社から交付された労働条件通知書や雇用契約書で確認します。
派遣先から別の契約書へ署名を求められました
機密保持や入館規則などの確認書である場合もありますが、派遣先との雇用契約のような内容になっていないか、署名前に派遣会社へ共有してください。
契約書は毎回保存した方がよいですか?
はい。更新ごとに期間、時給、業務、勤務時間、更新上限などが変わる可能性があります。ファイル名に適用期間を付けて保存すると比較しやすくなります。
まとめ
派遣で確認する書類は、派遣会社との労働条件を示す労働条件通知書・雇用契約書と、派遣先での働き方を示す就業条件明示書に分かれます。1つの書類だけですべてを判断せず、契約期間、業務、勤務場所、時間、賃金、更新、苦情窓口を突き合わせてください。
書面と実際が違うときは、証拠を保存し、まず派遣会社へ連絡します。就業開始前、更新時、条件変更時の3回を確認の節目にすると、認識違いを減らせます。