派遣社員の残業代|割増率・計算方法と未払い時の相談先

派遣社員の残業代について、派遣元・派遣先の役割、法定内と法定時間外、深夜・休日の割増率、時給からの計算、未払いが疑われる場合の確認・相談手順を解説します。

派遣社員が勤務記録と給与明細を照合して残業代を確認する様子
記事内容をもとに制作したイメージ画像です。
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派遣社員の残業代を支払うのは、雇用主である派遣会社です。派遣先が現場で残業を指示し、派遣先の担当者がタイムシートを承認する場合でも、給与計算と支払いは派遣会社が行います。

残業代を確認するときは、「契約時間を超えた時間」と「法律上の時間外労働」を分けます。さらに、深夜、法定休日、月60時間超の時間外労働が重なると割増率が変わります。

派遣元と派遣先の役割

項目主に担当する側確認内容
労働契約・賃金支払い派遣会社時給、割増率、締日、支払日
36協定の締結・届出派遣会社の事業場時間外・休日労働の範囲
現場の業務指示派遣先残業の必要性、終了時刻、作業内容
実労働時間の把握派遣元・派遣先が連携入退場、始業終業、休憩、持ち帰り作業
給与明細の訂正派遣会社時間数、単価、追加支給

派遣先が時間外労働を命じる場合も、派遣元の事業場で締結・届出された36協定の範囲内でなければなりません。さらに、労働者派遣契約や就業条件明示書で、時間外・休日労働を行わせられる範囲が確認できる必要があります。

「派遣先の上司が承認したから問題ない」「派遣会社は現場を知らないから関係ない」のどちらでもありません。両者が正しい勤務時間を共有し、派遣会社が賃金へ反映します。

まず分けたい5つの時間

区分意味割増の基本
所定内労働雇用契約で定めた時間内通常の賃金
法定内の所定外労働所定時間は超えるが、法定労働時間内法定の25%割増が直ちに必要とは限らない
法定時間外労働原則1日8時間・週40時間を超える25%以上
深夜労働22時から翌5時まで25%以上
法定休日労働法律上の法定休日に働く35%以上

たとえば、1日の所定労働時間が7時間で、同じ日に8時間働いた場合、追加の1時間は所定外ですが、原則として1日8時間の法定労働時間内です。派遣会社の就業規則で法定内残業へ独自の割増を設けている場合もあるため、賃金規程を確認します。

変形労働時間制、フレックスタイム制などが適用されると、時間外労働の判定方法が異なります。制度名だけで判断せず、自分に適用される勤務カレンダーと清算期間を確認してください。

時間外・深夜・休日の割増率

厚生労働省の案内に基づく代表的な最低割増率は次のとおりです。

働いた条件最低割増率支給額の目安
法定時間外25%以上基礎となる1時間単価の1.25倍以上
月60時間を超える法定時間外50%以上1.50倍以上
深夜25%以上1.25倍以上
法定休日35%以上1.35倍以上
法定時間外かつ深夜合計50%以上1.50倍以上
法定休日かつ深夜合計60%以上1.60倍以上

法定休日労働には、時間外の25%をさらに加える考え方ではありません。一方、深夜割増は法定休日や時間外の割増と重なる場合があります。

時給から残業代を計算する例

例1:時給1,600円で法定時間外を2時間

1,600円 × 1.25 × 2時間 = 4,000円

この例は、1時間当たりの基礎となる賃金を1,600円、割増率を25%として単純化したものです。

例2:時給1,600円で法定時間外かつ深夜を2時間

1,600円 × 1.50 × 2時間 = 4,800円

法定時間外25%と深夜25%が重なる例です。

例3:所定7時間の日に8時間働いた

契約上の所定時間を1時間超えていますが、原則1日8時間の範囲内です。この1時間を何倍で支払うかは、雇用契約、就業規則、賃金規程を確認します。

実際の割増賃金の基礎には、基本給以外の手当が含まれる場合があります。一方、法律上除外できる手当も限定されています。「時給だけに1.25を掛ければ必ず一致する」とは限らないため、派遣会社へ計算式を求めてください。

残業として記録したい時間

残業は、派遣先のタイムカードに表示された時間だけとは限りません。使用者の指示または業務上必要な時間で、労働から離れることが保障されていない場合は、労働時間に当たるか確認が必要です。

  • 始業前に義務づけられた朝礼・着替え・点検
  • 終業後の片付け、清掃、日報
  • 指示された研修、eラーニング
  • 電話やチャットでの業務対応
  • 機械停止やシステム障害による待機
  • 休憩中に電話・来客対応が必要だった時間
  • 派遣先から持ち帰るよう指示された作業

一律にすべてが労働時間になるわけではなく、指示、拘束、業務との関係で判断します。研修や待機の扱いは派遣の研修・待機・着替え時間と賃金も確認してください。

毎日残したい勤務記録

未払いを後から確認するには、実際の時間を継続して記録することが重要です。

  • 出勤・退勤時刻
  • 実際に業務を始めた時刻と終えた時刻
  • 休憩の開始・終了と、呼び出された時間
  • 残業を指示した人、指示方法、作業内容
  • 派遣先のタイムシート提出内容
  • 入退館記録、パソコンのログ、業務メール
  • 派遣会社へ申請した時間と承認結果

個人情報や機密情報を無断で持ち出してはいけません。自分の勤務時刻と指示内容を、会社の情報管理ルールに反しない方法で記録します。

給与明細との照合手順

  1. 給与の対象期間と締日を確認する
  2. 自分の勤務記録と派遣先の承認時間を比べる
  3. 法定内残業、法定時間外、深夜、休日の時間数を分ける
  4. 各時間数と給与明細の欄を照合する
  5. 適用された単価・割増率を確認する
  6. 翌月支給など反映時期のルールを確認する
  7. 差があれば、日付と時間を示して派遣会社へ質問する

派遣会社への質問例です。

〇月分の残業代について確認したいです。
私の記録では、法定時間外〇時間、深夜〇時間ですが、
給与明細ではそれぞれ△時間と表示されています。

対象期間、派遣先から連携された時間、
適用した1時間単価と割増率、差が出た理由を教えてください。

残業代が出ないと言われた場合

「派遣先から申請が来ていない」「事前申請がない」「固定残業代に含まれる」と説明されたら、その言葉だけで終わらせず、事実と規程を確認します。

派遣先が承認していない

実際に業務指示があり働いた時間を整理し、派遣会社へ報告します。派遣会社と派遣先の精算上の問題だけを理由に、労働者への賃金支払いが不要になるわけではありません。

事前申請がない

申請ルールに反したことと、実際に使用者の指揮命令下で働いた時間の賃金は分けて確認します。なぜ残業が必要になったか、誰が認識していたかを記録します。

固定残業代に含まれる

固定残業代の対象時間、金額、割増賃金部分が明確か、実際の残業代が固定額を超えた場合に差額が支給されているかを確認します。

解決しないときの相談先

  1. 派遣会社の給与・勤怠担当
  2. 派遣会社の苦情処理担当者、相談窓口
  3. 派遣先の苦情処理担当者
  4. 労働条件相談ほっとライン
  5. 労働基準監督署
  6. 総合労働相談コーナー
  7. 派遣制度上の問題は都道府県労働局の需給調整事業担当

相談時には、雇用契約書、就業条件明示書、給与明細、タイムシート、自分の勤務記録、派遣会社とのやり取りを時系列で用意します。

よくある質問

派遣先の社員が残業代を決めますか?

いいえ。派遣社員の賃金を支払う雇用主は派遣会社です。派遣先は実労働時間や現場の指示を派遣会社へ正しく連携する必要があります。

15分未満の残業は切り捨てられますか?

日ごとに一律で労働時間を切り捨て、実際に働いた分を支払わない運用は問題になり得ます。会社の端数処理だけでなく、実労働時間がどう記録されているかを確認してください。

残業を断ることはできますか?

時間外労働の根拠となる36協定、労働契約、就業条件、業務命令の内容、健康上・家庭上の事情などにより個別に確認が必要です。まず派遣会社へ、残業可能時間と断る場合の連絡手順を相談します。

派遣先の法定休日はどこで分かりますか?

派遣社員の休日・賃金条件は派遣会社との労働契約や就業規則で確認します。派遣先のカレンダー上の休日名だけで、法定休日かどうかを判断しないようにしましょう。

まとめ

派遣社員の残業代を支払うのは派遣会社です。派遣先の指示・承認と、派遣会社の36協定・労働契約・給与計算が連携して初めて正しく処理できます。

所定外、法定時間外、深夜、法定休日を分け、毎日の実労働時間を記録してください。給与明細と違いがあれば、時間数、単価、割増率、反映月を具体的に派遣会社へ確認し、解決しない場合は公的な相談窓口へ進みましょう。

参考情報